身近な人が亡くなられたとき、遺族が避けて通れないのが「相続手続き」です。
葬儀や法要の準備に追われる中で、銀行や役所への手続き、不動産の名義変更、税金の申告など、やるべきことは想像以上に多岐にわたります。
しかも、それぞれの手続きには「〇日以内」「〇か月以内」といった期限が定められているものも多く、知らずに放置してしまうと「受け取れるはずのお金を受け取れなくなった」「余計な税金や手数料が発生した」といったトラブルにつながることも少なくありません。
実際に相続の現場では、
- 「誰が相続人なのか分からず、話し合いが進まない」
- 「銀行口座が凍結されて生活費が引き出せない」
- 「期限に間に合わず、思わぬ損をした」
などのケースがよくあります。
だからこそ、相続手続きの全体像をあらかじめ知っておくことが大切です。流れを理解していれば、優先すべきことが見えて、余計なトラブルや負担を避けられます。
ここでは、代表的な相続手続きを時系列で整理し、さらに「よくある失敗例」も紹介します。これから相続に直面する方、将来に備えて知っておきたい方に役立つ内容です。
相続手続きの全体像
相続手続きは、大きく分けて次のステップで進めます。
- 死亡届の提出(7日以内)
- 相続人の確定(戸籍収集)
- 遺言書の確認(検認手続きが必要な場合あり)
- 相続財産の調査(不動産・預金・証券・借金など)
- 遺産分割協議(相続人全員で話し合う)
- 各種の名義変更・解約・申告手続き
ここから先は、具体的な手続きを見ていきましょう。
不動産の名義変更(相続登記)
土地や家を相続する場合は、法務局で「相続登記」が必要です。
2024年から相続登記は義務化され、原則3年以内に手続きを行う必要があります。
必要書類の例
- 遺言書または遺産分割協議書
- 戸籍謄本
- 住民票
- 固定資産評価証明書
よくある失敗例
- 不動産の分け方で相続人同士が揉めて登記が進まない
- 放置したまま売却や担保設定ができなくなって困る
銀行口座の解約・名義変更
亡くなった方の銀行口座は、金融機関が死亡を知った時点で凍結され、引き出しや振込ができなくなります。
そのため、相続人全員で「遺産分割協議書」を作成し、それを基に解約や名義変更の手続きを進める必要があります。
必要書類の例
- 戸籍謄本(相続関係を証明するため)
- 印鑑証明書(相続人全員分)
- 遺産分割協議書(全員の署名・押印入り)
銀行によって細かい必要書類は異なるため、事前に確認しておくとスムーズです。
よくある失敗例
- 複数の銀行に口座があり、どこにあるのか把握していない
- 戸籍や印鑑証明が揃わず、手続きに数か月かかってしまう
- 口座凍結後に葬儀費用を引き出そうとしたができず、急遽立て替えが必要になった
👉 銀行口座の解約・名義変更は期限の定めはありませんが、相続税申告(10か月以内)に影響するため、早めに進めることが大切です。
年金・保険の手続き
年金の停止と遺族年金
年金受給者が亡くなった場合、受給停止の届け出が必要です。
条件を満たせば「遺族年金」が支給されるため、年金事務所や役所で手続きを行います。
生命保険の請求
生命保険に加入していた場合は、保険金の請求も忘れずに。
保険金の請求は原則3年以内なので早めの連絡が安心です。
よくある失敗例
- 年金の停止を忘れ、後日返還請求が届く
- 保険会社への請求を失念し、時効で受け取れなくなる
税金関係
相続税申告
遺産が一定額を超える場合は、10か月以内に相続税申告・納付が必要です。
基礎控除額は「3,000万円+法定相続人の数×600万円」。
準確定申告
自営業や年金受給者などで確定申告をしていた場合、相続人が代わりに申告します。
期限は4か月以内です。
よくある失敗例
- 財産を正しく把握できず、申告漏れが発生する
- 期限を過ぎて延滞税や加算税が課される
その他の手続き
- 公共料金(電気・ガス・水道)の名義変更
- クレジットカードの解約
- 携帯電話やインターネット契約の解約
- 自動車の名義変更や廃車手続き
よくある失敗例
- クレジットカードを解約せず、年会費が引き落とされ続ける
- 自動車の名義変更を忘れ、事故や税金の通知が届く
まとめ
相続手続きには、
- 不動産の相続登記
- 銀行口座の解約
- 年金や保険の手続き
- 税金の申告
- 各種契約の解約や名義変更
など、多岐にわたる作業があります。
期限があるものや相続人全員の合意が必要なものも多く、後回しにするとトラブルに発展することもあります。
「全体像を把握すること」「チェックリストで漏れを防ぐこと」が、円滑に相続を進めるコツです。
ただし、実際には財産の内容や家族の状況によって必要な手続きが大きく変わります。
「自分たちだけでは進められない」と感じたときは、早めに専門家へ相談することで、時間や労力を大きく減らすことができます。
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