「相続」と聞くと、多くの方は「遺産をどう分けるか」という場面を思い浮かべます。
しかし、実際の相続は単なる財産分けではなく、法律上のルールや期限が細かく定められており、進め方を間違えると不要なトラブルや余計な税負担が発生してしまいます。
本記事では、実務経験をもとに、相続の基礎知識から全体の流れまで、初めての方にもわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、相続の全体像がつかめ、将来の備えやトラブル回避に役立てられるはずです。
相続とは?
相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産や権利・義務を、相続人が引き継ぐことをいいます(民法882条)。
財産には次のようなものが含まれます。
- プラスの財産:土地・建物、預貯金、有価証券、貴金属など
- マイナスの財産:借金、未払いの税金、保証債務など
つまり、相続は「もらう手続き」だけではなく、「引き継ぐ責任」も伴うことを理解しておく必要があります。
相続が発生するタイミング
人が亡くなると、その瞬間から自動的に相続が発生します。
特別な申請や届出をしなくても、法的にはその時点で相続関係がスタートします(民法882条)。
遺言書がある場合
- 原則として遺言の内容が優先されます(民法902条)。
- 遺言書に記載された通りに遺産を分けるのが基本です。
- ただし、相続人の「遺留分」を侵害している場合は、遺留分侵害額請求が可能です。
遺言書がない場合
- 民法の法定相続分(民法900条)に従って各相続人の持分が決まります。
- ただし、相続人全員が合意すれば法定相続分と異なる分け方も可能(遺産分割協議)
遺言書の有無による手続きの違い
遺言書なし → 相続人全員での話し合いが必要となり、調整に時間がかかる場合がある。
遺言書あり → 基本的に内容に従えばよく、相続手続きが比較的スムーズ。
誰が相続人になるのか
相続人になれる人は、法律で順位が決まっています。
- 第一順位:子(養子含む)と配偶者
- 第二順位:父母(祖父母)と配偶者
- 第三順位:兄弟姉妹と配偶者
配偶者は常に相続人となります。
また、再婚・養子縁組・認知など、家族関係によって相続権が変わるため注意が必要です。
相続の流れ(時系列)
相続は期限のある手続きが多く、以下のスケジュール感で進めます。
手続き | 期限の目安 |
---|---|
死亡届提出 | 7日以内 |
遺言書の有無確認 | できるだけ早く |
相続放棄または限定承認 | 3か月以内 |
相続税申告・納付 | 10か月以内 |
名義変更・遺産分割協議 | 随時(早めに) |

相続財産に含まれるもの・含まれないもの
含まれる例
- 不動産(自宅・土地・アパートなど)
- 預貯金・株式・債券
- 借金・ローン
含まれない例
- 受取人指定のある死亡保険金(受取人の固有財産)
- 墓地・仏壇
- 香典
よくあるトラブル事例
- 遺産分割協議が長引く(感情的対立)
- 借金を知らずに相続してしまう
- 遺言書の効力をめぐる争い
相続トラブルを防ぐには、事前に情報を整理し、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などの専門家に相談することが有効です。
まとめ
相続は、誰にでも突然訪れる可能性がある出来事です。
特に「借金の有無」「遺言書の有無」「相続人の範囲」を早めに確認することで、手続きがスムーズになります。
次回予告
次回は「遺言書の基本と種類」について解説します。
- 自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
- 失敗しない遺言書の作り方
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